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評価:現在の取り組み(Evaluation: Current Efforts) |
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国民のアウトカム報告(National Outcomes Reports) |
CMI IDCプログラムの評価は,毎年National Outcomes Reportsを通して行われている。1996年に開始されたこれらのプログラムは,カイザー保険の33万人のメンバーが糖尿病であると同定し(成人メンバーの6.1%),これらのメンバーのために症例の認定,血糖のスクリーニングとコントロール,脂質のスクリーニングとコントロール,視力検査,腎臓のスクリーニングと治療,診療施設の利用などを含む,さまざまな診療とプロセスの結果を報告している。
各報告書の際に,CMIはアウトカム報告の基準を決定するために,カイザー保険の中から医療と測定に関する専門家の諮問グループを招集する。各地域のCMIのアナリストは,これらの基準に向けて,カイザー保険の総合計を計算するために要約されたデータを収集する。これらの研究の独特な点は,全地域で統一された方法によって基準の特定を行うことであり,データと地域のケアシステムの方法が異なるにもかかわらず,同等な測定方法を経た糖尿病のメンバーのグループが発生することである。
CMIは最近,第4回目の糖尿病アウトカム報告(1999年)を行い,1996年から1999年のカイザー保険による糖尿病ケアの改善を示した(表1参照)。たとえば,HbAlcスクリーニングは,1996年の71%から1999年には80%に上昇し,適切な血糖コントロール(HbAlc<8%)を行った糖尿病のメンバーのパーセンテージも,33%から48%に増加した。IDCプログラムの主要な目標である脂質検査とコントロールも,検査の面では,1996年の39%から1999年には51%に上昇し,適切なコントロールを行った患者も,1998年の25%から1999年には29%に上昇した。また腎臓のスクリーニングと,腎臓病治療にも顕著な改善があり,1997年の59%から1999年には72%に上昇した。改善内容は,視力検査や,退院数とその日数にも表れている。
1996年から1999年の間に,新たに51,000人の糖尿病のメンバーが適切な血糖コントロールを行った。〔増加数は1999年の人数から1996年のベースライン数を引いたものである。〕これは血糖コントロールや他の危険な要因についての個人レベルの情報を含んでいない総計のデータであるが,ランダム化比較試験にもとづくいくつかの仮定を利用して,われわれの糖尿病ケアマネジメントプログラムの効果を推計することができる。United Kingdom Prospective Diabetes Study(UKPDS)は,英国における肥満とされる糖尿病患者を対象として,血糖コントロールのためのメトフォルミン強化療法と従来の治療(ダイエット,診療,非強化的な薬物療法など)を比較した13)。
UKPDSの結果によると,強化血糖コントロール療法の治療必要数(NNT)は10年間で,微小血管障害で49,網膜凝固で43,主な冠状動脈障害(致死的または非致死的心筋梗塞,急死,心不全,致死的または非致死的脳卒中)で10という結果であった。NNTは,1人の患者の結果を観察するために,何人の患者が治療を受けなければならないかを概算するための有力な転換方法である。NNTが50とは,一つの結果を出すために特定の期間に50人が治療を受けなければならないことを意味している。
われわれはUKPDSの結果にもとづいて,カイザー保険のメンバーにおけるよりよい血糖コントロールの効果を調べた。UKPDSにおける従来の方法と集中的な治療の効果は,われわれの被験者ではHbA1cレベル>8%からHbA1cレベル<8%に変化することと同等であると推測した。われわれはまた,被験者のコントロールの向上はUKPDSの期間と同じように10年間維持されると推測した。これらの推測から,血糖コントロールにおける改善の結果として10年間で,1,000件の微小血管障害の予防,1,2000件の網膜光凝固の予防,5,000件の主な冠状動脈障害の予防が可能であることが期待できる。〔推測数は良好なコントロールにある5万人以上のメンバー数をNNTで割ったものである。〕
またランダム化比較試験の結果から,1998年から1999年の間の糖尿病メンバーの脂質コントロールにおけるプログラム全体の効果を見積もることも可能である。1998年から1999年の間には,それまでより12,500人多い糖尿病のメンバーが適切な脂質コントロールを行った。〔増加は1999年の人数から1998年のベースライン数を引いたものである。〕West of Scotland Coronary Prevention Study(WOSCPS)の結果14)では,5年間の心筋梗塞,脳卒中,死亡の一次予防に対するNNTは42を示している。〔WOSCPSに参加した対象者数は糖尿病患者に限らない。糖尿病患者における心血管疾患イベントのリスク増加を考慮すると,糖尿病患者における脂質低下療法のNNTは非糖尿病患者群よりもさらに低くなることが予測される。〕心筋梗塞,脳卒中,死亡の二次予防として,Scandinavian Simvastain Survival Study(4S)15)の糖尿病患者サブグループの分析では,6年間で5のNNTを示したが,一方Long-term Intervention with Pravastatin in Ischaemic Disease(LIPID)16)は5年間で17のNNTを示した。〔4Sでのベースラインにおける平均総コレステロール値(260 mg/dL),そしてLDLコレステロール値(188 mg/dL)はカイザー保険の対象者に予想される脂質値よりも高値であると思われる。そのため,糖尿病患者に限局した研究ではないが,ベースラインの脂質値(平均総コレステロール値:218 mg/dL; LDLコレステロール値:150 mg/dL)がよりわれわれの対象者に近似すると思われるLIPIDスタディの結果にもとづいている。〕
われわれのデータは,糖尿病をもつメンバーの16%が冠状動脈疾患(心臓・血管障害の二次予防の対象者)であることを示した。もしわれわれの糖尿病のメンバーにおける脂質コントロールの改善が上記の研究に匹敵し,その改善が5年から6年維持されるならば,われわれは脂質コントロールにおける改善の効果を推定できることになる。1998年に比べ,新たに適切な脂質コントロールを行った12,500人のメンバーに関しては,5年から6年の間に,260件から650件の心臓・血管障害(心筋梗塞,脳卒中,死亡)の予防が予測できる。〔以下の計算より算出:1次予防に該当する10,500人をNNT42で除した結果の250がイベント回避数。また,2次予防に該当する2,000人をNNT5-17で除した結果の12-400がイベント回避数。総イベント回避数は260-650。〕
しかしながら,われわれは有意にプロセスを改善したが,文献が示すような病院利用率の改善には至っていない。事実,19997年から1999年で退院率と日数の双方が増加した。
これらの評価結果は,糖尿病のケアの医療分野に焦点を当てることと,CMIのエビデンスにもとづくガイドラインを反映することで,前述のようなプログラムの目的の達成を助けることができる。それらは,国民よる努力を促進させ,IDCプログラムの重要な目的である地域間の比較の機会を与える。結果は,成功を収めた地域や問題に直面している地域に焦点を当てることにより,医療の介入を改善,強化することに利用される。このことは,地域間で新しいことを学んだり問題を解決したりすることを可能にさせる。
また国民のアウトカム報告書は,問題を解決するために国による努力や研究を必要とする組織共通の課題を明確にする。最後に,効果的な実施と焦点を当てた医療分野は,医療情報システムなど,カイザー保険が企業全体で着手する他の計画に組み込まれる可能性がある。
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表1 Improvements in diabetes care outcomes within KP, 1996-1999
Measure |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
HbA1c screening
HbA1c< 8%(of total)
HbA1c< 8%(of tested)
Lipid testing
Good LDL control (of total),ages 18-75
Good LDL control(of tested),ages 18-75
Eye examination
Renal screening / treatment for renal disease
Hospital discharge rate (per 1,000)
Hospital days rate (per 1,000)
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71.3%
33.2%
46.5%
38.7%
NC*
NC
NC
NC
NC
957 |
78.3%
43.9%
56.1%
41.9%
NC
NC
72.3%
58.6%
248
983 |
79.1%
43.5%
55.0%
47.8%
25.0%
52.4%
74.1%
63.7%
266
1109 |
80.5%
48.4%
60.1%
50.8%
29.4%
57.8%
NC
72.5%
262
1020 |
*NC: Measure not comparable due to changes in specifications. |
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年次結果報告に加え,CMIは慢性疾患をもつメンバーの調査を実施している。メンバーの調査により管理情報からでは容易に入手できない,自己管理,ケアに対する満足度,健康状態の自己申告,他の健康測定などの情報を提供することによって結果報告書を補足している。
CMIは,ランダムに選ばれた糖尿病のメンバーの初回の調査を1997年に行った17)。全体で12,075人に21種のサービス分野について調査を行った。全回答率は,約60%(7,123人)であった。調査には,人口統計的な特徴(年齢,糖尿病の期間,人種)や,ヘルスケアサービス(予防接種,アスピリン投与,禁煙のためのカウンセリング),自己管理,喫煙状況を含めた自己申告の健康状態も含まれている。
われわれは,2001年に糖尿病のメンバーの再調査を計画している。分布や傾向のデータ分析に加え,糖尿病患者の健康状態に対するより高度な探求と分析調査を可能にするために,われわれは調査データと管理基準を関連付けることを企画している。
Memorandum of Understanding Reporting |
年次の糖尿病に関する結果報告書に加え,CMIは糖尿病ケアの選択された対策に対する年4回の報告書をサポートしている。これらの対策の報告は,CMIと各地域の間のMemorandum of Understanding(MOU)に詳細に記述されている。対策はケアマネジメントプログラムの特定の出資と関連づけられ,報告は年4回を基準に行われている。
糖尿病ケアマネジメントのケーススタディ:カイザー保険北西地域
(Case Study of Diabetes Care Management: KP Northwest Region) |
1998年の最初に,カイザー保険の北西地域(KPNW)は包括的な糖尿病ケアマネジメントプログラムを実施した。KPNWプログラムはCMI IDCの開発を進行させたが,プログラムはアプローチの面で,糖尿病のメンバーの全員を対象としたプログラムに近似している。IDCプログラムのように,KPNWの糖尿病ケアマネジメントプログラムのいくつかの重要な要素は,糖尿病患者の登録,エビデンスにもとづいた診療ガイドライン,患者の自己管理への焦点,また医師,看護士,薬剤師から構成される糖尿病の専門家チームを含んでいる18)。
CMI IDCとKPNWプログラムは相互に恩恵を受けている関係にある。IDCの開発にあたり,効果的な作業や習得された内容をわれわれのプログラムに合併させることにより,CMIはKPNWを含むカイザー保険内の既存の糖尿病ケアマネジメントプログラムの上に作成された。KPNWプログラムは,他地域の効果的な作業やカイザー保険のリーダーシップによる経済的支援および全人口ケアへの後援を通して,CMIの作業から多くを学んでいる。
KPNWの経験からの結果は,カイザー保険の包括的な糖尿病ケアマネジメントプログラムの潜在的な効果を示している。この研究の結果報告は,「プライマリーケアの設置と糖尿病患者の登録にもとづいたこの組織的なプログラムは,大規模な集団でのケアのプロセスと成果に密接に関連している」18)という結論を出している。顕著な改善は,毎年の網膜スクリーニングが2年間に50%から68%に上昇したこと,また予防注射が4年間に40%から60%に上昇したことに表れている。研究期間(1987年から1996年)の間にも有意な改善がみられ,血糖コントロールテストが22%から83%,腎臓病スクリーニングが1%から43%,脂質検査が37%から56%に上昇した18)。
外部作業の報告(External Performance Reporting) |
年次のCMI糖尿病結果報告のための医療プロセスや健康状態の基準の報告に加え,各地域はHealth Plan Employer Data and Information Set(HEDIS)のために,National Committee for Quality Assurance (NCQA)に糖尿病ケアの対策を報告しなければならない。これらヘルスケアの幅広い分野に関連するデータは,ヘルスプランの認定と作業対策のためにNCQAに利用される。HEDISは,数年にわたり糖尿病患者の視力検査の報告を要請している。2000年には(1999年のデータ)HEDISは糖尿病の包括的な対策の報告も要請している。これらの対策はHbA1cテストとコントロール,視力検査,脂質のプロフィールやコントロール,糖尿病性腎症のモニタリングを含んでいる。全般的には,カイザー保険はこれらの対策に成果を収めたといえる。〔カイザー保険統計分析部門によるデータ。〕HEDIS対策に加え,American Diabetes Association(ADA)は,Provider Recognition Program(PRP)のための目標を構築した。これらの対策は,各医師が糖尿病患者に対するケアを評価する際に応用されることを目的としている(表2参照)。
CMIの糖尿病対策はこれらのHEDISの対策に対応する内容も含まれるが,これら2つの詳細は,直接的対比を不可能にする内容も含んでいる。一般的に,CMIの対策はカイザー保険が他のヘルスプランに比べて高品質なデータにアクセスすることを可能にし,HEDISの対策よりも,より医学的な関連性のある結果を捉えている。
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表2 KP HEDIS diabetes care results and NCQA national benchmarks
HEDIS Measure |
HEDIS 2000*
1999 Reporting Year
KP Commercial
Population
(Best Performing Region)
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HEDIS 2000*
1999 Reporting Year
NCQA benchmarks
Commercials Population
|
ADA
PRP
Target** |
75th percentile |
95th percentile |
HbA1c testing
HbA1c poor control
Eye exam
Lipid Profile
Lipid Control
Diabetic Nephropathy
Monitorring
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80.8% (92.3%)
38.5% (23.2%)
71.3% (83.8%)
74.1% (87.7%)
46.5% (55.9%)
65.3% (80.6%)
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82.5%
34.8%
54.0%
76.2%
43.9%
44.3%
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86.6%
26.1%
66.4%
80.0%
48.5%
56.0%
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93%
≦21%
61%
85%
63%
73%
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*Data obtained from office performance analysis, Kaiser Permanente, October 2000.
**American diabetes association: http://www.diabetes.org/ada |
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