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インフォーミング・ジャッジメント
インフォーミング・ジャッジメント
0 I I' II III IV V VI
0 日本語訳にあたって
  序文 (Foreword)
Mike Clarke,Daniel M. Fox,Peter Langhorne
  イントロダクション:6つのケーススタディからのレッスン
 (Introduction:Lessons from Six Case Studies)

Daniel M. Fox,Andrew D. Oxman
渡邉 裕司(浜松医科大学 臨床薬理学)
津谷喜一郎(東京大学大学院薬学系研究科 医薬経済学)
日本語訳にあたって
 日本では,急速な高齢化と少子化が同時進行し,経済状況が低迷を続けるなかで,医療制度にも大きな変革が求められている。医療資源が無尽蔵なものではなく,限られたものであることから,目をそむけることができなくなってきた。
 この限りある医療資源を最大限に有効活用し最大の「効果」(effectiveness)をあげる,すなわち「効率」(efficiency)を最大にするためには,個人を対象とした「エビデンスに基づく医療」(evidence-based medicine:EBM)のみならず,マスを対象とした「エビデンスに基づくヘルスケア」(evidence-based health care:EBHC)が必要である。そこではEBHCの政策の立案とともに,立案の良否を判断し,さらに実行に移す意思決定(decision-making)がなされねばならない。

 本シリーズのタイトルである「インフォーミング・ジャッジメント」は「研究から得たエビデンスを,いかに医療政策決定者(policy maker)の適切な判断のために提供するか」を検討する材料として,以下の6ヵ国のケーススタディを紹介したものである。その一部は,2000年10月に南アフリカ・ケープタウンで開催された第8回国際コクラン・コロキウム(8th International Cochrane Colloquium)においてMilbank Memorial FundのDr. Daniel M. Foxらによって報告されている。

I. オーストラリア:医薬品の選択におけるエビデンスの利用( I′として,アップデートを含む)
II. カナダ:ポリシーサイクルへの研究の適用:ブリティッシュコロンビアにおけるエビデンスに基 づく医薬品政策の実施と評価
III. 米国:カイザー保険の全国統合糖尿病ケア管理プログラム
IV. ノルウェー:ブルー・プリスクリプション−転換期におけるプログラム−
V. 英国:NICE(National Institute for Clinical Excellence)とNHS(National Health Service)による リレンザへの保険給付
VI. 南アフリカ:HIV母子感染抑止の試み

 以上,6つのケースはいずれも内容豊富であり,政策決定を導くための研究の難しさを分析している。今回の序文とイントロダクションに引き続き,本誌に各ケーススタディをオーストラリアからシリーズで順次掲載し,紹介する予定である。
 どのようにすばらしい計画も実行されなければただの「絵に描いた餠」であり,また実行された場合には,そのアウトカムを評価する作業が必須である。ケーススタディの著者らは,異なった背景と内容のケースを論じているにもかかわらず,彼らの経験に多くの共通点があり,他者から学ぶべき点が多いことを認めている。

 日本において直接医療政策に関わる者のみならず,薬に関するエビデンスに基づき意思決定する規制当局政策担当者,エビデンスを「つくる」作業に従事する臨床薬理学者,企業開発担当者,CRC,さらに,薬のエビデンスを「つくり」かつ「つかう」臨床医など,多くの人々にとって示唆に富む内容であり,本シリーズがわが国において「研究から得たエビデンス」(research evidence)と「医療政策決定」(health policy making)を有機的に連結するための一助となれば幸いである。

 本シリーズの原本は,冊子版とともに全文が以下のwebsiteからPDFでダウンロード可能である。

 http://www.milbank.org/reports/2001cochrane/010903cochrane.html

 また,日本語訳についても,順次,以下のライフサイエンス出版社のwebsiteにPDFで収載していく予定である。

 //lifescience.co.jp/

 最後に,日本語版の掲載を快く許可していただいたコクラン共同計画(The Cochrane Collaboration)のDr. Andrew D. Oxmanと,Milbank Memorial FundのDr. Daniel M. Fox やMr. Jeffrey Edelsteinら関係者に感謝したい。また本シリーズ掲載にご尽力いただいたカリフォルニア州立大学 松家由美子氏にお礼申し上げる。

 本翻訳は,一部,平成13-14年度厚生労働科学研究「EBMに基づいた必須医薬品リスト選定のガイドライン作成に関する調査研究」(主任研究者:渡邉裕司)によりなされた。


浜松医科大学臨床薬理学
東京大学大学院薬学系研究科医薬経済学
浜松医科大学臨床薬理学
昭和大学医学部第二薬理学
北里大学医学部薬理学
富山医科薬科大学医学部附属病院薬剤部
渡邉 裕司
津谷 喜一郎
大橋 京一
内田 英二
熊谷 雄治
川上 純一

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