このケーススタディの筆者らは,研究から得られるエビデンスを用いて,ヘルスケアのための政策決定(policy making)をガイドしようとするいくつかの共同研究について,記述し評価している。各ケーススタディは,それぞれ共同研究によるものである。3つのケーススタディ(オーストラリア,ブリティッシュコロンビア,ノルウェー)は研究者と公共部門(public sector)のポリシーメーカーが著者に加わっている。2つのケーススタディ(南アフリカ,英国)では製薬会社の経営陣が著者に加わっている。1つのケーススタディ(カイザー保険)は米国の大手非営利ヘルスケア組織(health care organization)のポリシーメーカーと研究者の共同作業による。1つのケーススタディ(南アフリカ)では政府機関の職員がケースの準備には貢献したが共著者としては加わらなかった。
本報告書準備のための,2000年10月の編集者会議で,著者らは研究を政策決定に使うことにおける協力についての,最優先の一般的事項(overriding generalization)として次の点に同意した。すなわち,「研究者とポリシーメーカーの協力関係の適切な目的は,研究から得たエビデンスを,ポリシーメーカーの判断のために提供し,ポリシーメーカーがその判断について説明できるようになることである」(The proper purpose of collaboration between researchers and policymakers is to use evidence from research to inform judgments for which policymakers are accountable.)。イントロダクション(序論)では,この研究者とポリシーメーカーの一般的事項を述べるとともに,研究の成果を具現するには,さまざまな苦労が伴うということを述べている。たとえばケーススタディに述べられているポリシーを実施するにあたり,著者らの会議以後,6ヵ国のうち4ヵ国でなんらかの妨害とそれによる退行(set back)がみられた。
今回の報告書作成プロジェクトは,コクラン共同計画 Steering GroupのAndrew D. Oxman前議長(chair)と,Milbank Memorial Fund のDaniel M. Fox会長によって企画された。コクラン共同計画は,1993年に設立された非営利の国際組織であり,人々が十分な情報のもとに,ヘルスケアに対する決定を下せるようになることを目的とし,ヘルスケアに関わる介入の効果のシステマティックレビューを,作成,維持し,アクセス性を高める活動を行っている。Milbank Memorial Fundは1905年に寄付により設立された財団であり,ポリシーメーカーや研究者とともに,ヘルスポリシーにおける重要な課題について活動している。またコクラン共同計画の設立に至るまでのいくつかの活動にも参加し,特に米国においてヘルスケアポリシーに責任ある人々に対し,システマティックレビューについての関心を高める活動を行ってきた。
最後に,多忙にもかかわらず,このプロジェクトに尽力いただいたAndrew D. Oxmanや著者の方々に感謝したい。また,研究と政策決定について極めて経験豊富で,イントロダクションから個々のケースに至る原稿をレビューしてくださった,編集ディレクターで,ハーバード大学医学部ヘルスケアポリシー部門のPaul Cleary教授,ならびにプログラムオフィサーで,メリーランド州 Health Care Commissionの前エグゼクティブディレクター John Colmers氏,さらに当財団の2人のスタッフに謝意を表したい。
Mike Clarke
Deputy Chair, The Cochrane Collaboration Steering Group
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Daniel M. Fox
President, Milbank Memorial Fund |
Peter Langhorne
Chair, The Cochrane Collaboration Steering Group |
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