患者報告アウトカム
(Patient-Reported Outcome:PRO
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厚生労働省科学研究班開発
患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)
使用についてのガイダンス集

臨床試験のためのPatient-Reported Outcome(PRO)使用ガイダンス

2.6. 使用許諾と日本語版開発

本パートで扱う尺度の使用許諾と日本語版開発については、一般論として述べる。個別の尺度によって様々な設定があることに留意すること。

2.6.1. 尺度の著作権の確認

原則としてPRO尺度にはベルヌ条約が適用され、著作権が設定されている 1。開発者または第三者機関がその管理を行なっている。著作権侵害を避けるためにも、日常診療または臨床研究でのPROを使用する場合、著作権の確認をする必要がある。使用許諾については契約書を結ぶ場合、開発者の同意のみで良い場合、文献を引用することで許可を得る必要がない場合など、尺度や研究費などの条件によって様々である。尺度そのものを論文本体や出版物に掲載する場合も著作権に留意し、必要に応じて開発者に確認をする必要がある。

2.6.2. 海外で開発された尺度の日本語版開発

PRO尺度の日本語版開発は、オリジナル版の開発と同時、またはオリジナル版の公表後に開発されることが一般的である。日本語版開発をする場合、開発者を含めた研究体制を整備し、2名による日本語への翻訳(順翻訳)、2つの順翻訳の統合版作成、統合版のオリジナル版言語への翻訳(逆翻訳)、開発者らとの暫定版作成、言語学的妥当性の検討といった標準的な方法に準拠して行われるべきである 2。著作権も関係するため、必ずオリジナル版の開発者の許諾を得て進める必要がある。

尺度の計量心理学的特性の検討について、オリジナル版の開発時に同時に日本語版を作成する場合と、既にオリジナル版で計量心理学的特性が確認されている段階から日本語版を作成する場合の2通りがある。後者の場合、オリジナル版で計量心理学的特性が確認されている場合であっても、海外と日本の文化的な背景等の違いにより、日本語に翻訳した尺度をそのまま使用することが困難な場合も想定されることから、日本語版の開発でも必要に応じて(開発者らと協議をして)計量心理学的特性を検討する。

2.6.3. 日本語版利用時の注意点

日本語版開発者が海外で開発された尺度の日本語版を作成した場合であっても、必ずしもその日本語版開発者が日本語版の著作権を有しているわけではない。使用許諾は著作権の管理者に確認すべきである。

2.6.4. ePROでの使用許諾

尺度の使用許諾を得る際に、紙で調査するpaper PRO(pPRO)か電子的に取得するelectronic PRO(ePRO)か、というように、取得する手段を尋ねられることがある。許諾を申請する段階で、PROを取得する手段を明確にしておくことが望ましい。手段間の同等性(Mode equivalence)、Migration(ePROへのマイグレーション)については2.7.5.で述べる。

    参考文献

  1. Anfray C, Arnold B, Martin M, et al. ISOQOL Translation and Cultural Special Interest Group (TCA-SIG). Reflection paper on copyright, patient-reported outcome instruments and their translations. Health Qual Life Outcomes. 2018; 16(1): 224.
  2. Wild D, Grove A, Martin M, et al. ISPOR task force for translation and cultural adaptation. Principles of good practice for the translation and cultural adaptation process for patient-reported outcomes (PRO) measures: report of the ISPOR task force for translation and cultural adaptation. Value Health. 2005; 8(2): 94-104.

(川口 崇)