患者報告アウトカム
(Patient-Reported Outcome:PRO
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厚生労働省科学研究班開発
患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)
使用についてのガイダンス集

臨床試験のためのPatient-Reported Outcome(PRO)使用ガイダンス

4. 主な査読評価のご意見とそれに対する対応

該当箇所 いただいたご意見 対応
全体 プロの方々が記載されているので、敢えてとは思いますが、HRQOLではなく、HRQLにされているのですね。ガイダンスが多くの方がみることを考えると、多くヒットする言葉の方がという気がします。Googleでのヒット数は、HRQOL(5,720,000件) HRQL(649,000件)です。EMA/FDAは確かにHRQLを採用していますが、そのような根拠でしょうか。 ご指摘の通り、各国の規制当局の表現に合わせる方針としたため、このままHRQLの表記とさせていただく方針とさせていただきました。
全体 想起期間、属性など、わからない人にはわからないですが、少し略語のようにminimum requirementのように用語集などがあると重宝するように思いました。 発刊時期に間に合わないので対応ができませんが、今後の参考とさせていただきます。
全体 本ガイダンス案全体で「臨床医」と「臨床家」が混在していますが、FDAガイダンスの日本語訳では「臨床医」が用いられていることを踏まえ、意図的に書き分けているのでなければ、「臨床医」に統一してはいかがでしょうか。 BEST(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK338448/)には、ClinROの説明にA measurement based on a report that comes from a trained health-care professional after observation of a patient’s health condition.とあり、臨床医=医師、臨床家=health care professionalsと使い分けるため、本稿では「臨床家」で統一いたしました。
全体 全体 「臨床試験のためのPatient Reported Outcome (PRO)使用ガイダンス」とありますので、項目として、「臨床試験におけるPRO評価計画ガイド」と「PROの評価結果の報告に関するガイド」があった方が、目的に沿うものになるのではないでしょうか。 ご指摘ありがとうございます。大幅な作業が必要になるため、次回改訂時などに参考とさせていただきます。
全体 PROを用いたデータ収集について、正しい収集方法や臨床試験の関係者が留意すべき事項について、いずれかの項目で記載されてはいかがでしょうか。製薬協が公表している『治験におけるPatient Reported Outcomes ~臨床開発担当者のためのPRO利用の手引き~』の項目4「PRO尺度を用いたデータ収集の留意点」が参考になると思われます。 ご指摘ありがとうございます。大幅な作業が必要になるため、次回改訂時などに参考とさせていただきます。
1.1 「本ガイダンスは、臨床試験においてPROを使用する際に最低限押さえておくべきルールを簡潔に示すものである。」との記載について、「最低限のルール」という表現は試験実施者への負担となるおそれがあるため、「指針」、「一般原則」といった表現としていただいた方がよいと考えます(1.4項にある類似の記載についても同様)。 強制感を緩和すべく「最低限」という文言を削除し、修正いたしました。「本ガイダンスは、臨床試験においてPROを使用する際の抑えておくべきルールを簡潔に示すものである。」といたしました。
2.3 略語はエキスパートの方々にとって普通でも、読んでみる人間には不思議なことも多々あります。COIも普通はconcept of interestの略語ではないですし、このガイダンス中に何度も出てくるわけではありません。それをわざわざ略語にする意味があるでしょうか?こうしたなじみのない言葉が壁になるように常々感じています。 PROの適切な選択ではCOA、COI、COUは避けては通れず、今後も様々なガイダンス等で使用される流れになっており、記載は残す方針とさせていただきました。一方でご指摘の通り難しい用語ではあるため、参考文献に重要なCOAに関する和訳論文も追記いたしました。
2.4.2 クロンバックαについてのみ0.7という閾値の値がありますが、このような閾値は試験の成否に関わることからセンシティブであり、他のパラメータでは特にそのような記載がないことから、削除した方が良いのではないか。 製薬協からの2016年に発出されている『治験におけるPatient Reported Outcomes~臨床開発担当者のためのPRO利用の手引き~』にも参考値としてこの閾値の記載があるため、削除ではなく「一般的には」という前提となる文言を挿入対応いたします。
2.5.2 「申請時に必要なのは、」の「申請」が何の申請を指すのか明確にした方がよいと考えます(医薬品の承認申請なのか、別の申請を指すのか)。 前文に「FDAのガイダンスでは」と書いており、著者の原稿通りとさせていただきました。
2.6.2 海外で開発された尺度の日本語版の開発にあたって、オリジナル版で妥当性等が確認されている場合であっても、海外と日本の文化的な背景等の違いにより、日本語に翻訳した尺度をそのまま使用することが困難な場合も想定されることから、日本語版の尺度については必要に応じて妥当性等を検討する必要がある旨を記載してはいかがでしょうか。 「オリジナル版で計量心理学的特性が確認されている場合であっても、海外と日本の文化的な背景等の違いにより、日本語に翻訳した尺度をそのまま使用することが困難な場合も想定されることから、日本語版の開発でも必要に応じて(開発者らと協議をして)計量心理学的特性を検討する。」を追加いたしました。
2.7.5.1 ePROの規制要件としていくつか掲載されておりますが、薬事申請の観点から「厚生労働省令44号」を加えるのはいかがでしょうか。 追記致します。規制の階層を考慮して、e-文書法、厚生労働省令第44号、Electronic Record / Electronic Signature(ER/ES)指針で記載いたします。
2.7.5.2 表1.PROデータ収集方法の特徴が記載されておりますが、少し誤解を招きそうと思いましたので、コメントします。
1) ePROの運用経験が少ない場合、セットアップに時間を要する : 経験の差でセットアップの時間に差はでますが、紙と電子の比較であれば、本質的なことですので、表現は変えられた方が良いかと思います。
2)紙の場合の費用について、印刷、郵送費用 と記載があります。しかしながら、データ入力のDBのセットアップは必要になりますので、誤解を生じるかと思います。あるいはEDCへの入力を想定されていたでしょうか?
表1は、文献72(72. Society for Clinical Data Management. Good Clinical Data Management Practices.)を引用しているため、原稿通りとさせていただきます。
2.9 2.9.1ではMIDを臨床的に意味のある差としていますが、2.10では臨床的に意味がある最小の差となっています。宮崎貴久子さんの文献を見るに、「意味のある差(値)」ではなく「最小の差」ではないでしょうか。 MIDの概念や言葉の整理にはまだ議論があるところですが、本ガイダンスでは混乱を避けるために、「臨床的に意味のある差」で統一いたしました。
2.10.1 「一方、分布に基づく方法では、生物統計家の勘が用いられたりする。」は「一方、分布に基づく方法では、標準正規分布の形状に応じて妥当な閾値が設定される。その閾値の決定は生物統計家の経験によることが多い。」などはいかがでしょうか。 「勘」という言葉が読者の誤解を招かないように、「生物統計の専門家としての経験則」に修正いたしました。
2.11 この章には医療がより良いものとなるよう、患者参画が重要であるという記載があるが、「臨床研究への患者の参画が求められ」という記載や、「研究結果の普及における」という書きぶりには、やはり患者中心とはズレを感じる ご指摘の部分については、以下の通り修正・加筆いたしました。 「臨床研究への患者・市民の知見を参考にすることが求められ」「研究成果の普及は、共有の意思決定に繋がるため、この段階での参画も看過できない」

誤字等の指摘も含めると180件を超える指摘やご助言をいただき、そのうちの約80%に修正・加筆を加えました。

臨床試験のためのPatient-Reported Outcome(PRO)使用ガイダンス ver. 1.0
編 集
川口 崇、兼安 貴子、下妻 晃二郎
発行日
2023年3月7日
発 行
 
厚生労働研究20AC1003「関連学会の取組と連携したPRO ガイドラインの作成」班