患者報告アウトカム
(Patient-Reported Outcome:PRO
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厚生労働省科学研究班開発
患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)
使用についてのガイダンス集

臨床試験のためのPatient-Reported Outcome(PRO)使用ガイダンス

2.12. 倫理的配慮および臨床研究の指針

2.12.1. 研究倫理指針の遵守

産業界がPROを使用して医薬品等の規制当局への申請を行う際、および研究者が臨床試験においてPROを使用する際に従うべき研究倫理指針 1 (「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」)に基づくことが大前提である。

まずは、きちんとした臨床研究を行い、それを報告すること自体が研究者の倫理的態度といえる。いわずもがなであるが、患者(研究協力者)からせっかく収集したPROのデータが、研究計画やその運用の不備で、利用不可能な事態になることを避けることこそが倫理的配慮として求められることである。

臨床研究の倫理指針は被験者保護の観点から細かな配慮がされているが、えてして侵襲を伴う介入に関するものに力点が置かれがちであり、PROのような一見アンケートにもみえるデータ収集については、その適用がややおざなりになりがちである。しかし、病を抱えた患者に、それなりの負担をかけて得られる情報は、採血や生検によるサンプル採取と本質は変わらないと考えるべきである。

2.12.2. PROと倫理

患者に代わる代理(Proxy)による測定については、本人がQOL調査用紙に記入ができない場合は、どのようにその代替策をとるかという観点からいろいろな工夫が記されることが多い。しかし、ただ、本人の回答が困難だからとりあえず代理で済ませようという安易な姿勢は避けなければならない。

他のPRO測定上の倫理問題としては、回答者の負担を考えない膨大な量のPRO質問票の記入を求めることが挙げられる。これは、ICTツールのサポート等で一部は解消可能とは思われるが、基本的に、念のためあれもこれも聞いておこうといった研究計画にならないように、事前に入念に検討し、対象者には必要最小限の負担を求めるようにしなければならない。

また、質問内容が回答者の心理的負担になる問題がある。答えるのが辛い質問や、悲しいことが想起されるようなビニエット(回答の材料となる短い話)の選択の際には、回答者サイドに立った配慮が必要である。

PROが医師‐患者間のコミュニケーションに有用であるという視点から見ると、こうした臨床試験ベースのPRO収集に、医師や他の医療者がどのように関わるかという点も重要である。臨床研究とすれば、PROデータを担当医が臨床にフィードバックすることは、バイアスの元凶と考えられるが、患者との良好な関係あるいは患者の治療メリットを損なってまで、医師が研究者的態度に徹することは困難と思われる。今後検討が必要である。

    参考文献

  1. 文部科学省,厚生労働省,経済産業省:「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」令和3年3月 23 日 https://www.mhlw.go.jp/content/000909926.pdf(最終アクセス2022年4月18日)

(齋藤 信也)