厚生労働省科学研究班開発
患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)
使用についてのガイダンス集
[ 目次 ]
臨床試験のためのPatient-Reported Outcome(PRO)使用ガイダンス
2.11. 患者参画とPRO
医療の提供には、患者の体調や症状、治療の影響などの情報が必要になる。PROは、患者以外の第三者が知りえない情報を入手するには不可欠なものである 1。患者中心の医療の実践には、エビデンスに基づく共有の意思決定やエビデンスの源泉となる臨床研究への患者・市民の知見を参考にすることが求められ、日本では2016年の臨床ガイドラインの作成におけるガイダンス 2、医学研究・臨床試験のガイドブック 3と続き、2021年には薬事行政における患者参画ガイダンスの発行へと至っている 4。
臨床研究においては、その構想、つまり「患者にとって何が重要か」を決める段階に患者が関わる意義は極めて大きく 5、PROはその重要性の指標となる。また研究成果の普及における参画 6 は、共有の意思決定に繋がるため看過できない。
臨床研究や、研究成果の普及における患者参画では、診療ガイドライン作成時と同様、最低2名の参加が望まれ、少なくとも1 名はトレーニングを受けた者が患者のメディエーターとして、他の1 名は当該疾患の経験者があたること 3,7、公平性と正当性、公正性や衡平性に配慮すること 8 が求められる。
- Powers III JH, Kellee Howard K, Saretsky T, et al. Patient-Reported Outcome Assessments as Endpoints in Studies in Infectious Diseases. Clin Infect Dis. 2016; 63 Suppl 2: S52-6.
- 公益財団法人 日本医療機能評価機構 EBM 普及推進事業(Minds)患者・市民専門部会「患者・市民参加の基本的な考え方」2016 年 11 月公開版 https://minds.jcqhc.or.jp/s/public_base_think (最終アクセス2021年12月8日)
- 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 患者参画検討ワーキンググループ.「医学研究・臨床試験における患者・市民参画(PPI)について」2018年11月16日初版作成、同年11月22日公開. https://www.amed.go.jp/ppi/leaflet2018.html(最終アクセス2021年12月8日)
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 「患者参画ガイダンス」2021年9月7日. https://www.pmda.go.jp/files/000242830.pdf (最終アクセス2021年12月8日)
- Wilson H, Dashiell-Aje E, Anatchkov M, et al. Beyond study participants: a framework for engaging patients in the selection or development of clinical outcome assessments for evaluating the benefits of treatment in medical product development. Qual Life Res. 2018; 27: 5-16.
- Martineau JT, Minyaoui A, Boivin A. Partnering with patients in healthcare research: a scoping review of ethical issues, challenges, and recommendations for practice. BMC Medical Ethics.2020; 21: 34.
- 公益財団法人 日本医療機能評価機構 EBM 普及推進事業(Minds) 診療ガイドライン作成マニュアル2020 ver. 3.0, 第2章 準備, 2.6 患者参画 https://minds.jcqhc.or.jp/s/manual_2020_3_0 2021年3月22日初版作成、同年11月24日修正版. (最終アクセス2021年12月8日)
- Sandman L., Bond K., Hofmann B. (2017) Exploring Ethical Rationales. In: Facey K., Ploug Hansen H., Single A. (eds) Patient Involvement in Health Technology Assessment. Adis, Singapore. https://doi.org/10.1007/978-981-10-4068-9_2 (最終アクセス2021年12月8日)
参考文献
(兼安貴子、星野 絵里)