■JPT-online■
「よりよき臨床試験の基盤整備を求めて」をテーマに別府サンライズカンファレンスを始めたいと思います。
今日は自由な雰囲気の中でこれからの日本の臨床試験のあり方についていろいろと提案をしていただきたいと思います。
最近治験に関する研究会が多いのですが,治験は臨床試験の一部です。治験を含む臨床試験は臨床研究に包含されます。
まず治験の部分の基盤整備をしっかりとしなければならないということで,新GCP以降,治験の部分の基盤整備を行ってきました。
それが臨床試験,さらに臨床研究の基盤整備につながっていくのだということですが,今日はその臨床試験を中心にディスカッションしたいと考えています。
治験という言葉もキーワードとして本日も出てくるかと思いますが,それは最初に越えなければならないハードルだと考えていただきたいと思います。
例えば,プラバスタチンは日本で開発され世界に出て行った画期的な薬ですが,
市販後,本当に人類の健康に役立っているかどうかを調べる大規模な臨床試験は,日本では遅れています。
1995年にスコットランドで行われた試験(WOS Study)がNew England Journal ofMedicineに報告されました。
プラセボを対照群に使用した無作為化二重盲検比較試験で,死亡というエンドポイントで行った臨床試験です。
その後対象が少し異なりますが同じNew England Journal of Medicineに,同様の大規模臨床試験が,1996年に米国から,1998年にオーストラリアから報告されています。
日本でも行われていますが,試験デザインそのものもプラセボ投与群との比較になっていませんし,無作為割付ではあるのですが,
二重盲検法を採用せずに食事療法群との比較ということでevidenceとしての質が劣るという感じがするわけです。せっかくの日本発信の薬なのですが
Evidence-based Medicineの時代に入って,このままでよいのかという大きな疑問があります。
今日は,それぞれの立場でいろいろご発言いただいている方に声をかけて集まっていただきました。
臨床試験を進めていくためには,薬をつくる産,臨床試験を実施する学,それに一般市民の理解と協力が必要です。
それから官ですね。つまり産・学・民・官の4者の協力によって初めて臨床試験は成り立つものだと思います。
今日は産,学,官の方々に集まっていただきました。民が入っていないではないかといわれそうですが,これは次の段階ではないかと思います。
私どもがある程度のことをディスカッションしたうえで,また民とも語り合っていくということが重要で,本日のカンファレンスはそのためのステップとして位置づけたいと思います。