6.アミオダロン
抗不整脈薬の多くは,心不全症例において無効ないし予後悪化を招くことが知られている。III群の抗不整脈薬に属するアミオダロンは,すべての臨床試験ではないものの,心不全症例における予後改善効果が認められている。これまでに行われた13の臨床試験の結果を解析したところ,心筋梗塞ないし心不全症例において,死亡率を低下させること,特に不整脈死を減ずることが明らかとなった11)。一方,非不整脈死の減少効果は認められなかった。ただし,アミオダロンには交感神経活性抑制効果があることが示されており12),上述のごとく,β遮断薬には心不全症例の予後改善効果が認められていることから,現在も,心不全症例における不整脈死の予防以外の効果について検討されている。 女性心不全患者において,加齢とともに増加する死亡率に,閉経が関与している可能性が示唆されている。これは,エストロゲンが,血管拡張作用や,心不全増悪因子とされているサイトカインの産生抑制効果を有することが動物実験により示されているためである。これまでのところ,この点に着目した大規模臨床試験の結果は報告されていないが,vesnarinoneの心不全患者における有用性を検討した三つの臨床試験に登録された症例から,左室駆出率が30%以下で50歳以上の有症候の女性心不全患者を抽出し,エストロゲンを投与されている症例と投与されていない症例を比較したところ,エストロゲン投与群において,有意に死亡率が低かった(図4)13)。 この結果は,閉経後の女性心不全患者に対するホルモン補充療法の有用性を示唆し,今後の,前向き大規模試験の必要性を示唆する結果であると考えられる。
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