3.アンジオテンシンII(AII)受容体拮抗薬(ARB)

 1997年にARBのlosartanがACEIであるcaptoprilに比し死亡率を低下させることが発表された(ELITE試験)7)。ELITE試験は安全性を1次ポイントとして行われたことから,有用性を確認するためにELITE II試験が行われ,losartanの優位性は否定されたものの,losartan投与群の方が咳嗽等の副作用による脱落が有意に少なかった8)

 心室リモデリングは心不全増悪の主要因の一つであり,その促進に寄与するとされているAIIの心臓における産生は80%がキマーゼを介しており,ACEIでは,キマーゼによるAII産生を抑制できない。このことから,ACEIとARBの併用には,相加的な効果が期待される。ARBであるcandesartan,ACEIであるenalaprilおのおの単独ないし併用した場合の効果を検討したRESOLVD pilot studyでは,ARB単独療法に比し,ARBおよびACEI併用療法において左室拡大抑制効果が大であることが明らかとされた9)。さらに,2000年11月に行われたAmerican Heart Associationにて発表されたVal-HeFTの結果では,ACEIやβ遮断薬など標準の心不全治療を受けているNYHA II〜IVの慢性心不全患者に対してARBであるvalsartanを投与したところ,プラセボ群に比し予後改善,QOL改善をもたらすことが示された。

 現在のところ,ELITE II試験の結果を受け,副作用等のためにACEIを服用不可能な心不全症例にARBを用いる,というコンセプトとなっているが6),Val-HeFTの結果は,ARBはすでにACEIやβ遮断薬などの標準的な心不全治療を受けている症例に対してさらに併用すべき薬剤となる可能性を示唆している。

4.抗アルドステロン薬

 心不全においてレニン-アンジオテンシン系が賦活化されると,アルドステロンの産生も亢進し,心不全の病態形成において重要な役割を担う。ACEIによるアルドステロン産生抑制は一過性であることも明らかとなったことから,抗アルドステロン薬であるspironolactoneの心不全患者への有用性を検討するRALES試験が行われた。その結果,標準的な心不全治療に加えspironolactoneを追加投与すると,心事故発生率,死亡のリスクが減少することが明らかとなった(図310)。したがって抗アルドステロン薬も,ACEI,β遮断薬に次ぐ,有用な心不全治療薬となる可能性が考えられる。

図3 Spironolactone投与群と非投与群における生存率の比較(文献9より引用)

5.カルシウム拮抗薬

 1996年,カルシウム拮抗薬であるamlodipineが非虚血性心不全の予後改善効果をもたらすことが示唆された(PRAISE試験)。その検証を行ったPRAISE-2の結果が2000年3月のAmerican College of Cardiology にて発表され,amlodipineによる予後改善効果は確認されなかった。しかし,高血圧や狭心症を有する心不全患者に対し,ACEIと併用する安全性は確認された。

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