■治療学・座談会■
CKD 診療の現状と課題
出席者(発言順)
(司会)伊藤貞嘉 氏(東北大学大学院医学系研究科内科病態学講座腎・高血圧・内分泌学分野)
井関邦敏 氏(琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部)
渡辺 毅 氏(福島県立医科大学第三内科)
斎藤能彦 氏(奈良県立医科大学第一内科)

特定健康診査からみた CKD

■尿検査の必要性

伊藤 渡辺毅先生,CKD の早期発見はどこまで実現できているのでしょうか。

渡辺 CKD の早期発見・早期治療には 2 つの問題があります。1 つは健診によって,症状もなく,かかりつけ医をもたない人の CKD をいかに見つけるかということです。もう 1 つは,糖尿病や高血圧など,他の疾患の受療者のなかから CKD をどう発見するかです。

 前者では,健診時になんらかのかたちで腎機能を評価する必要があります。2008 年に開始された特定健診では,尿蛋白測定だけが必須項目で,血清クレアチニン測定が必須ではないため,CKD が発見しにくいという状況になりました。

井関 沖縄の調査結果をみると,透析患者で健診を受けている人もいます。その人たちを除き血清クレアチニン値 10 mg/dL で透析を受けていない人も,数はそれほど多くないですが,実際にはおられます。たしかに貧血はあるし,症状もありました。

渡辺 日本の場合には,学校検尿もあるし,健診もなんらかのかたちでほぼ全員に受ける機会はあります。2008 年は特定健診が開始されたばかりで,手続き上の問題もあって,受診率はかなり低下しました。2005 年の健診受診率は全体で約 44%でしたが,2009 年は 20%台と予想されています。今後の上昇は見込まれていますが,健診制度の整備上の問題,どの項目に重点を置くかという問題と同時に,健診の意義を市民に啓発することが重要だと考えています。

 問題の 2 つめに関しては,かかりつけ医が,生活習慣病などの高リスクの方々に対して,定期的に CKD をスクリーニングする必要があります。実際には血清クレアチニン測定は行っていても,尿検査をされないことも多いようです。血清クレアチニン測定は eGFR も重要ですが,定期的な尿検査の実施が,CKD の早期発見では最も大事だと思っています。

伊藤 滋賀県では,糖尿病患者における毎年 1 回の尿検査の実施率が約 20%でした。それで,啓発活動が重要だと思われます。患者が医師に,「私の尿蛋白は何 mg 出ていますか」など,血圧値を聞くのと同様に,自分から聞いてもらうようになるのが最善ですね。

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