星野 栄養管理には,2 年前から診療報酬加算として 1 日 1 人あたり 12 点, 500 床の病院で 1 日 6 万円,年間 2000 万円のインセンティブが付きました。 PPM により少しずつ手弁当でやりなさいというかたちから,ようやく専任を置こうと思えば置ける環境が整ってきたと思いますが,いかがでしょうか。
東口 PPM は,米国の,専任にこだわったやり方ではなく兼業兼務でもチーム医療の実践が可能なシステムを,少し大げさな名称で表わしたものなのです。Fischer 教授にも「良い名前だ」と評価され,論文に書かせてもらった経験があります。
米国の NST は実際,専任チームで行われていることが多いのですが,そうしますと,徐々に時間に余裕ができてくるようです。 要するに管理栄養が広く行き渡っていくと,対象患者数が減ってきます。とはいうものの,専任チームがあれば活動はしやすくなります。 しかし,日本はとうていそこまではいっていないため,鷲澤先生は非常に貴重な存在です。
NST 本来の姿は,専任がいて,各診療科のスタッフが集まってきて,横にリンクしてやるのが最善でしょう。 社会の流れからも,PPM といえば,先に述べた PPM−IIIが最も理想的だと思います。 特にここ 2 年間で NST を組織した病院の大半はこの PPM−III方式を参考にしていただいており, あるひとつの科が中心になって活動しています。場所は薬剤師さんのところでも栄養士さんのところでもよいのです。
そこで,診療報酬が加算された背景が重要になります。 がん治療,または高齢者,後期高齢者の健康保険制度では,今後,必ず栄養管理の充実が求められます。 ですから,今のうちに足場を固める意味においても栄養管理実施加算が新設されたというように,私は認識しています。 将来に投資するための使い方を考えたのではないでしょうか。
大事なことは,この資金を使い,いかに病院内で長期にわたって活用されるシステムをつくるかだと思います。 それが可能なら,後に問題になる対治療効果,経済効果,さらに全国民に対する栄養管理の浸透による効果を示すことができると思います。
緩和ケアの立場から言えば,最近の流れとしてがん対策基本法や, がんプロフェッショナル養成プログラムの実施,あるいは WHO(世界保健機関)の活動をみると, 厚生労働省はそれらをすべてふまえながら栄養管理の普及を望んでいるように思います。 星野先生が指摘されている外来 NST も最終的にその一端を担うと考えています。 私は,「今は苦しいかもしれないけれど,NST を地道に行い,栄養管理実施加算をきちんと算定して,その収益をそのようなソフトやシステムづくりに使うように」と, 病院中に提言してまわっています。