■治療学・座談会■
21世紀におけるスタチンの考え方
出席者(発言順)
(司会)寺本民生 氏 帝京大学医学部内科 教授
多田紀夫 氏 東京慈恵会医科大学附属柏病院総合診療部 教授
山田信博 氏 筑波大学医学専門群臨床医学系内科 教授

ガイドラインにおける意義

寺本 この2種類のスタチンが加わって,われわれは6 種類のスタチンが使用可能になりますが, 現在でも高脂血症の治療薬におけるスタチン系薬剤が占める割合は 90%にのぼります。これが本当に正しいことなのかどうか,私はいつも悩むのです。 いま出されている高脂血症診療ガイドラインは,どちらかというと診断を中心にしているガイドラインで, そこには治療法がまだ明記されていないのですが,スタチンはガイドラインの中でどういうところに位置づけられるとお考えですか。

多田 J−LIT はわが国において高脂血症患者 5万人(最終的には3 万数千人)を6 年間フォローアップしたスタディですが, その成績では,LDL−C が 140mg/dL 未満に低下しなかった例で冠動脈疾患発症が有意に高いことがわかりました。 140mg/dL というのは動脈硬化学会のガイドラインでも目標として設定された値ですので, スタチンを用いた薬物治療の有効性のなかでこの設定値の意義が証明されたことになります。

 先ほどありましたように,ガイドラインの目標値を達成できない症例にはより強力なスタチンを投与することにもなります。 その結果,実際に冠動脈疾患がどのくらい一次も二次も含めて予防できたかというデータを集めて検証していかなくてはなりません。 それをみながら,今後また,改訂時のガイドラインの目標値をどこまでに設定すればいいかがより明確化すると思います。

寺本 ガイドラインでは管理基準も作られていますが,日本には管理基準を出すだけのデータがいまのところないわけです。 だから,一応指針としてこれぐらいがいいのではないかというところを示した。 これだけきちっとした効果が立証されているスタチンは,ガイドラインを検証して左右できうる薬剤だと思います。

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