寺本 現在の 4 つのスタチンのほかに,近々もう 2 つ(ピタバスタチンとロスバスタチン)が上市される予定です。 ピタバスタチンはすでに申請中で,認可がそろそろ下りる段階です。これについて,山田先生,お話し下さい。
山田 ピタバスタチンは日本で初めて合成されたスタチン製剤で,おそらく第 2 世代に属すると思います。国産の性能のいいロケットということになるでしょう。 それから水溶性,脂溶性という分類では,これは半ば脂溶性ですね。
第 2 世代ですから,ガイドラインの治療目標値の達成率が高いことが期待されます。 数値でいうと,総コレステロールで 40%ぐらい,LDL−C ではうまくいくと 50%ぐらい低下させることができそうな薬剤です。 薬効機序としては,腸管循環をするということでコレステロール合成を非常に抑制し, それによって肝臓での LDL 受容体の活性なども上昇するのだと思います。 LDL−C 低下作用だけでなく,中性脂肪を下げて HDL−C を上げる作用があり,リポ蛋白代謝全体を改善するということです。 それから small dense LDL も減らすといわれているので,スタチンの中ではかなり進化している薬といえそうです。 ただ,やはり新しい薬剤ですから今後のエビデンスの蓄積が必要です。 薬物相互作用は,比較的少ない薬剤に位置づけられるかと思います。
寺本 副作用については何か特別なことはわかっているのですか。
山田 臨床治験段階では従来のスタチンとそれほど大きく変わらないと思いますね。 ただ,アトルバスタチンのように,男性ホルモンが低下することがあります。
寺本 アトルバスタチンでも同様ですね。その辺は今後気をつけて見ていかなければいけないでしょうね。 ロスバスタチンもその次に控えているわけですが,多田先生,お願いします。
多田 ロスバスタチンは,わが国において第 II 相臨床試験で長期安全性を確認している段階です。 III 相はブリッジングスタディをやっていますので,実際どのぐらい日本人での成績が明らかになっているかはちょっと不明ですが, 欧米を中心として非常に強力な薬として脚光を浴びています。もともとはわが国で開発されて海外で育てられたスタチンであると聞いております。
この薬の特徴としてまずお話ししなくてはいけないのは,プラバスタチン以来の水溶性の薬だということで, 肝臓で特異的に働くことが考えられます。脂溶性薬は細胞の中に入るときには濃度勾配で入っていけるわけで, さまざまな細胞内に非特異的に入っていくことができますが,水溶性薬が細胞内に入るときは, 有機アニオントランスポーターを介して入っていく。このトランスポーターは肝に特異的に発現しているので,肝臓に特異的に取り込まれるわけです。
薬剤相互作用に関しては,ロスバスタチンはほとんど CYP を介する代謝を受けませんが,関与する際の代謝酵素は CYP2C9 と CYP2C19 と言われています。ある程度相互作用も考えて使ったほうが無難と思われます。
ピタバスタチンもロスバスタチンもアトルバスタチンのように強力なスタチンということですが, その理由は半減期の長さにあります。ロスバスタチンは半減期が 20 時間と,従来のスタチンの中で一番長いという特徴をもっています。 アトルバスタチンは代謝産物にも効力があることで半減期が長くなるのですが,ロスバスタチンの代謝産物には薬効がなく,腸管循環の関与も考えられるものの, なぜ半減期が長いのかは不明です。半減期が長いということは有効性が長く保たれるわけですが,反面,副作用を起こしたときの対処はしっかり考えなければいけないことになります。 ロスバスタチンの約 10%が腎から排泄されること,血液脳関門を通過しないことも本薬の特徴と思います。
寺本 コレステロールの低下率や LDL−C の低下率はどうですか。
多田 ロスバスタチン 10mg 投与にて LDL−C は約 50%低下します。 アトルバスタチンと比べた研究では,同じ 10mg を投与してほぼ同等か,もしくはロスバスタチンのほうが効力が少し高いという成績があります。
まだわが国では治験中で情報は少ないですが,目立った副作用は報告されていないようです。
寺本 ロスバスタチンの日本における開発の状況でちょっと変わっているのは, ブリッジングスタディでやっていることで,日本人のマスでの副作用のデータが出てこないのが 1 つの問題点かもしれません。