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不整脈の臨床研究は,1980年代後半のCAST1)においてIc群薬が心室期外収縮のある陳旧性心筋梗塞例の生命予後をかえって悪化するという結果により,大きく様相を変えた。I群薬に代わりIII群薬の有効性が期待されたが,d-ソタロールをプラセボと比較したSWORD試験2)では,実薬群で死亡率が有意に高いことが判明し,18ヵ月間追跡する予定が平均観察期間148日の時点で中止された。以上のように心室性不整脈の抑制によって生命予後の改善(多くの場合,陳旧性心筋梗塞例について)を図る目論見は,I群薬とIII群薬(Ikr遮断薬)については失敗に終わったといえる。 この事実は,いわゆる重症の心室期外収縮(Lown分類の3以上)を合併した陳旧性心筋梗塞例ではこれらを合併しない例に比べて生命予後(突然死を含めた)が悪いが,心室期外収縮が生命予後に直接影響しているのではなくむしろ生命予後の悪いことのサインであることを示唆している。そして,心室期外収縮を抑制するために投与された抗不整脈薬の催不整脈作用によってかえって生命予後が悪化したと理解されている。 最近の不整脈に関する臨床研究は,(1)アミオダロンによる陳旧性心筋梗塞例あるいは心不全例の生命予後改善,(2)植え込み型除細動器を用いた重症心室性不整脈例の生命予後改善,(3)アミオダロンや新しい抗不整脈薬による心房細動抑制,を中心に展開されてきている。 1.アミオダロンによる陳旧性心筋梗塞,心不全例の生命予後の改善 アミオダロンは他のIII群薬とは異なり,K電流の遮断以外にNa電流やCa電流の遮断作用,β遮断効果を有しており,実際のところこれらのどの作用が以下に述べる有効性の原因となっているのかは必ずしも明らかではない。アミオダロンの効果をプラセボなどと比較した前向き試験を表1にまとめた。試験によって対象となった病態が異なり(表2),またエンドポイントも異なっており(表3),不整脈抑制試験ではなく心不全に対する試験といった性格のものもあり,結果の解釈に当たっては注意が必要である。
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