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まえがき と 序
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なぜEBMは神格化されたのか

誰も教えなかったエビデンスに基づく医学の歴史

ISBN:978-4-89775-484-0 C1022
定価5,720円(本体5,200円+税10%)

■大脇幸志郎

四六判並製,620頁
2024年9月10日発売

著者について

1983年大阪府生まれ。2008年東京大学医学部医学科卒。出版社勤務、医療情報サイト運営の経験を経て2018年から医師。診療とともに執筆および動画チャンネル「大脇幸志郎のもっと不健康でいこう」の配信を行う。著書に『「健康」から生活をまもる』(生活の医療社、2020年)など、翻訳書にペトル・シュクラバーネク『健康禍 人間的医学の終焉と強制的健康主義の台頭』(生活の医療社、2020年)、ヴィナイヤク・プラサード『悪いがん治療:誤った政策とエビデンスがどのようにがん患者を痛めつけるか』(晶文社、2022年)、ジェイムズ・C・モア『ホノルル ペストの火 1900年チャイナタウン炎上事件』(生活の医療社、2022年)がある。

目的が手段に変わり、指標が現実に置き換わる。
医学の外でもきっと同じことが起きている。
エビデンスという言葉に戸惑いを感じている、すべての人に読んでほしい。

東浩紀

国内外の膨大な文献を根拠にEBM誕生の歴史的背景やEBMを考案した人物たちの意図を紐解く超大作

「この本は、一度でも『エビデンス』という言葉を使ったことのあるすべての人のためのものだ」
「医学についての言説は時代に敏感でなければならないし、つねに過去の正義が実は正義ではなかったと訂正を繰り返さなければならない」(本文より)

エビデンスに基づく医学(EBM)という言葉が、あたかも医学が事実の裏付けのない空理空論からすでに脱却したかのような含みで語り交わされている。しかし、実際には医学における重要な判断にエビデンスが必須どころか努力目標としてすら求められていないという事実がある。

本書は、公衆衛生の発達、臨床医学の飽和、薬害事件による臨床試験の制度化などを背景として医学が統計技術を取り込んだ歴史や、EBMという言葉を考案した人物たちの来歴を紹介する。さらに、エビデンスについての誤解や拡大解釈から発展していくイメージとの相互作用に注目することで、医学が生産的に実証性を維持するための課題を探る。巻末に索引、用語解説、年表、主な登場人物一覧、医学雑誌歴代編集長一覧などを付する。

■ 目 次 ■

  • 略語一覧
  • まえがき
  • 序 エビデンスに基づく医学はどのように定義されるか
  • 第一部 臨床医学における実証的アプローチの発展と行き詰まり
    • 第一章 前史:ダニエル書からリンドまで
    • 第二章 一九世紀の公衆衛生改革:センメルヴェイス、ナイチンゲール、スノー
    • 第三章 RCTの確立:圧覚、血清療法、結核
    • 第四章 制度化される実証:スルファニルアミドとサリドマイド
    • 第五章 オースティン・ブラッドフォード・ヒルと観察研究
    • 第六章 RCTの大規模志向とメタアナリシス
    • 第七章 ピラミッドからGRADEへ
    • 第八章 病名文学の時代
    • 第九章 夢の終わり:臨床試験レジストリ、PROSPERO、COVID-19
  • 第二部 臨床の科学を夢見た人々
    • 第一章 ファインスタインとサケットの臨床疫学
    • 第二章 アーチー・コクランとイアン・チャーマーズ
    • 第三章 EBMの誕生:ゴードン・ガイアット(1991)
    • 第四章 コクラン共同計画の発展と情報化
    • 第五章 サケットの応答と再定義
    • 第六章 後継者たち
    • 第七章 医学誌の問題:カッシーラー、スミス、ランドバーグ
    • 第八章 産業とEBM
    • 第九章 ゲッチェ事件
  • 第三部 噂に基づくEBM
    • 第一章 ジェンナー、ナチス、タスキーギ
    • 第二章 スーザン・ソンタグの矛盾
    • 第三章 レトリックとしての反証可能性
    • 第四章 ナイチンゲールからイリイチへ
    • 第五章 ナラティブ(ベイスト)メディスン
    • 第六章 エビデンスに基づく政策立案
    • 第七章 エイズ、ワクチン、陰謀論
  • 結語 私たちには何が必要なのか
  • 謝辞
  • 付録
  • 参照文献
  • 図表一覧
  • 医学雑誌歴代編集長一覧
  • 主な登場人物一覧
  • 年表
  • 用語解説
  • 文献索引
  • 人名索引
  • 事項索引