高血圧 変わる常識・変わらぬ非常識臨床高血圧の125年
ISBN:978-4-89775-430-7
定価2,420円(本体2,200円+税10%)
【著者】桑島 巖
A5判 168頁
2021年3月22日発行
2021年は,コロトコフの聴診による血圧測定法が発明された1896年から125年目にあたります。現在では,高血圧は心血管病の最大のリスクであることが判明していますが,実は近年まで,血圧は高い方がよいとされていた事実もあります。当時は常識と考えられていたことも今では非常識。降圧薬の開発にもさまざまな試行錯誤がありました。本書では,臨床高血圧の125年を振り返り,時に厳しく時にユーモアを交え,研究の道のりと最新情報をわかりやすく解説しています。現在の「常識」があれば救えたかもしれない国内外の大物政治家の話や,日本人研究者の知られざる貢献についても数多く紹介しています。
事実を正しくみるという信念を貫いてきた桑島 巖氏が,臨床高血圧研究の物語に満ちた125年をわかりやすく解説しています。各時代の研究者たちがそれぞれに真摯に治療に向き合う姿に敬意を払いつつ,どこに誤りがあったのかを考察。コラムも多く記載されており,楽しみながら高血圧について学べる1冊です。
高血圧診療に携わる方から学生の方,また医学史に興味のある方にもおすすめです。
■ 目 次 ■
- 序
- 第1章
見えないものの正体を見る─ 血圧測定ことはじめ- 好奇心こそ科学─ Halesによるウマの血圧測定
- 動物からヒトへ,そしてベッドサイドへ
- 診察室外(Out-of-Office)での血圧を見る
─ 携帯型自動血圧計と家庭血圧計の開発と実用化 - “脱・水銀”とウェアラブル血圧計
- 血圧の心負荷を把握する─ 中心血圧という概念
- 第2章
高血圧は,生体に“essential(必要不可欠)” が常識だった- 高血圧という概念,その始まり
- 高血圧は敵か味方か?
- 高血圧が脳卒中,心臓病の原因だと気づくまで
- 第3章
高血圧発症の成因を求めて- レニン-アンジオテンシン系の研究
- 食塩と高血圧
- 神経調節因子と高血圧
- 第4章
降圧薬開発の歴史- 降圧薬以前の高血圧治療
- 降圧薬の黎明期
- サイアザイド系利尿薬の登場
- メチルドパとクロニジン─ 中枢に作動する特異な降圧薬
- β遮断薬─ 個別的治療の旗手
- α遮断薬─ 降圧薬から前立腺肥大治療薬へと転換
- 抗アルドステロン薬(抗ミネラルコルチコイド薬)
- Ca拮抗薬の登場─ 安定した降圧でトップに返り咲く
- ACE阻害薬─ 心保護薬として高い評価
- 第5章
ARB─ 狂騒の果てに- アンジオテンシンII受容体拮抗薬の光と影
- ディオバン事件
- “臨床研究法” で不正は根絶できるか?
- 氷山の一角─ CASE-J 研究
- 第6章
高齢者高血圧,下げるべきか─ 大規模臨床試験による検証の時代- EBM以前の医療とは
- EBMの時代へ─ 観察追跡研究による検証
- 降圧薬で脳心血管合併症を減らせるか?─ ランダム化比較試験始まる
- SPRINT研究の衝撃
- 高齢者高血圧とpolypharmacy
- 第7章
高血圧治療ガイドラインの変遷- 米国のガイドライン─ JNCシリーズ
- WHOレポートと欧州のガイドライン
- 英国のBHS/NICEガイドライン
- 日本のガイドラインの変遷
- 第8章
Out-of-Office BP(診察室外血圧)─ 高血圧は“点”から“線”へ- 白衣をみると血圧が上がる
- 仮面高血圧(masked hypertension)—夜間のリスクと職場のリスク
- 仮面高血圧が治療対象に,白衣高血圧が対象外に
- 第9章
難治性高血圧へのあくなき挑戦─ 電気治療からデバイス治療まで- 電気治療─ 一時的な効果は得られたが…
- 放射線療法─ 弊害が語られることなく,やがて消滅
- 発熱療法─ 悪性高血圧に窮余の一策
- 手術で血圧を下げる!─ 交感神経節切除術
- 頸動脈圧受容体電気刺激─ ペースメーカ治療
- カテーテル腎除神経術─ 革新的治療か,はかない夢か
- 第10章
二次性高血圧- 原発性アルドステロン症
- 褐色細胞腫
- Cushing症候群
- 第11章
高血圧心から心不全まで─ 避けられない結末をどうする- 高血圧心とは何か
- 高血圧心と拡張機能障害(HFpEF)
- 高血圧心と心房細動
- 第12章
脳卒中と血圧管理- 脳卒中による死亡の減少と病型の変化
- 脳梗塞急性期治療の進歩
- 脳卒中急性期の血圧管理
- 慢性期脳卒中の降圧療法
- 文 献
- 索 引
- あとがき─常識についての一考察