切手にみる糖尿病の歴史
ISBN:978-4-89775-312-6
定価2,640円(本体2,400円+税10%)
堀田 饒(ほった にぎし)(中部労災病院名誉院長)
B5判/140頁/オールカラー
2013年1月発行
日本糖尿病協会機関誌「月刊 糖尿病ライフ さかえ」の連載記事が待望の単行本化!
糖尿病の専門医である著者が世界中から集めた切手を通して、糖尿病の歴史から最新の治療までをわかりやすく解説!
(本書より)
“糖尿病との闘いは合併症との闘い”と言われて久しく、世界的に糖尿病が増加の一途を辿る今日、糖尿病とその合併症への対応として種々の手段が講じられてきています。
より良い糖尿病の管理と治療を目指すうえで、糖尿病の病態をはじめとして糖尿病に纏(まつ)わる知識を広く身につけ、それを智恵にかえて実践に反映することが求められます。此度、上梓する運びとなりました「切手にみる糖尿病の歴史」が、その主旨に少しでもお役に立てれば幸甚です。
本書は、糖尿病の患者さん、その家族に限定して編まれたものではなく、我が国の40歳以上の4人に1人が糖尿病で、糖尿病予備軍を入れれば2人に1人であることを考えると、読者対象は広がってきます。“切手”という媒体を介して紡いだ物語ですが、一人でも多くの方々に糖尿病に関心を持っていただき、健常な方々には糖尿病予防と健康維持につながり、糖尿病の気のありそうな方、あるいは糖尿病の患者さんにとって潤いのある療養生活の一助になることを願うものです。
■ 主な内容 ■
- 序
- プロローグ
- 糖尿病の歴史において、1921年は忘れられない年
- Ⅰ. 記録の時代
- エーベルス・パピルスにみる糖尿病最古の記録
- ヒポクラテスの教えに糖尿病の管理・治療と予防の礎をみる
- 糖尿病を腎臓の病気ととらえたガレーノス
- “糖尿病”を“diabetes”と名付けたアレタウス
- 肥満が糖尿病の原因と指摘していた古代インドの医学
- 古の中国では“糖尿病”を“消渇”と言い表していた
- 現代でも色あせない中世の足病変への考えと対応
- 中世のエジプトに糖尿病多発は暖かい気候とナイル河の水が因か
- 平安時代の藤原道長に2型糖尿病の典型をみる
- Ⅱ. 表徴の断章
- 糖尿病を代謝学的にとらえた最初の人
- 人体解剖学をとおして近代科学の発達に大きく貢献
- 生物学における近代実験生理学の誕生
- 近代医学の発展に医化学の体系化とその創始で貢献
- 糖尿病の近代研究の幕が切って落とされた
- 糖尿病診断の糸口が見つかる
- 糖尿病が“diabetes”から“diabetes mellitus”となる
- Ⅲ.実験の断章
- 糖尿病の原因・病態研究の出発点となった肝グリコーゲンの発見
- 顕微鏡の開発と応用がもたらした、“膵ランゲルハンス島”の発見
- 整いつつあったインスリン発見の土壌
- 糖尿病の診断と管理・治療に大きく貢献した尿糖検査の普及
- インスリン発見の道を拓いた血糖測定の進歩
- 病状把握にケトン体と酸・塩基平衡の果たす役割は大きい
- インスリン発見の夜明け前
- インスリンの時代— ⑴ アイデア誕生
- インスリンの時代— ⑵ トロントチームと膵抽出物“アイレティン”誕生
- インスリンの時代— ⑶ 牛の膵抽出物が“死の淵にあった”少年を救う
- インスリンの時代— ⑷ インスリンをほぼ掌中にしていた科学者とその悲劇
- インスリンの時代— ⑸ 名誉の争奪とノーベル賞受賞
- インスリンの時代— ⑹ インスリンの大量生産を可能にした産学共同
- インスリンの時代— ⑺ インスリン発見のエピローグ
- Ⅳ.治療の断章
- インスリン製剤の開発と進歩
- 糖代謝に及ぼすインスリンとインスリン拮抗ホルモン
- 低血糖の症状・徴候とその仕組み
- 食事療法の変遷を辿る
- 大昔から知られていた運動の効果
- 鋭い観察力が経口血糖降下薬の開発につながった
- 糖尿病は教育、検査と自己管理の病気
- 内分泌学の発展に大きく寄与したインスリン測定系の確立
- Ⅴ.合併症の断章
- 糖尿病にかかったならば、定期的な眼科的検査が不可欠
- 白内障の病態と手術の進歩
- 失明の危険性が潜む黄斑浮腫、緑内障そして角膜症
- 古くから知られていた“多尿”と“浮腫”の病
- 対応のむずかしい糖尿病神経障害
- 多彩な症状・徴候が診る人を悩ます糖尿病神経障害
- 突然死と背中合わせの心筋梗塞
- 脳血管障害の診断と治療に飛躍をもたらした画像診断の進歩
- 定期的チェックが足病変の予知・予防となる
- 対合併症に無視できない高血糖と高血圧の是正
- 糖尿病は妊娠をむずかしくし、妊娠は糖尿病をむずかしくする
- 肥満は糖尿病とその合併症の危険因子
- 軽視できない歯周病をはじめとした口腔症状
- 死因として無視できない感染症
- 糖尿病とその合併症の大きな危険因子、脂質異常症
- 多岐にわたるたばこの弊害
- アルコールは条件付きで
- 血糖コントロールに及ぼす影響大きいストレス
- 無視できない認知症
- 骨粗しょう症と骨折を防ぐ
- 糖尿病とがんの関連は今
- 大血管症に苛まれた文化人
- 細小血管症に苛まれた文化人
- Ⅵ.曙光の断章
- 世界糖尿病デー
- 将来への期待―膵臓移植と人工膵島
- 将来への期待―再生治療
- エピローグⅠ
- インスリン治療初期の期待と不安
- エピローグⅡ
- 糖尿病と共に歩む人生の成功とは?
- 人名索引
- 参考文献