寺本 企業健診などではメタボリックシンドロームへの配慮が重要になりますが, どういう対策を立てておられますか。
廣部 私どもでは,3 年前から腹囲の測定と,試行段階ですが, 内臓脂肪面積を腹囲インピーダンス法で測定し,この両者で動機付けをしていこうと思っています。
腹囲は,内臓脂肪と皮下脂肪の両方を含んでいますが, 皮下脂肪が変動しにくいので,腹囲減少は内臓脂肪の現象と考えられ,指標としては簡単で便利です。 将来的には内臓脂肪量を簡便に測れれば,非常にわかりやすくなるでしょう。 腹囲だけではなく,悪玉である内臓脂肪量を指標にして,個々にアプローチする必要があると考えています。
寺本 メタボリックシンドロームという概念が出てきたおかげで, 生活習慣の改善の必要性が非常に明確になりました。おそらく脂質異常症,特に動脈硬化予防という観点では, これのもつ意味は意外に大きいのではないかという気がしています。数値自体を議論するより, そのあたりのことが重要で,一般診療にいかしていただきたいと思います。
菅原 東京都練馬区の調査で,腹囲の 85 cm が BMI でいくと 23.5 にあたり,決して肥満というわけではありません。 しかし,87 cm の人が 2 cm 減らす努力をする,多くの人が同様に行えば,正規分布が左に 2 cm シフトすることになります。この 2 cm のシフトに大きな意義があると思います。
佐々木 確かに,この 85 cm はあくまでも努力目標値で, 85 cm を越えると崖があるわけではありません。
廣部 LDL−C の管理目標値とまったく同じで,その数値はシンボリックな値です。 90cm の人が 86 cm になっても意味があるし,逆に 80 cm の人が 84 cm になったら問題があります。
寺本 そうです。「そこに向かっていきましょう」というメッセージなのです。 そこのところが非常に重要なのです。
2007 年版については,ある程度理解されてきたのではないかと考えています。 今後臨床の場でいかされ,国民の健康維持に少しでも貢献するところがあれば,幸いだと思います。 ご出席の先生方にも是非ともお願いしたいと思っています。本日はありがとうございました。