急性心不全に急性心筋梗塞,不安定狭心症などの急性冠症候群が合併した場合は,冠動脈形成術を行うことにより,致死的イベントが回避できると考えられ,これは左冠動脈主幹部病変の合併も同様と考えられる。一方で,慢性心不全に合併する安定狭心症については意見の一致をみていない。たとえば生命予後に影響を及ぼさない安定した冠動脈疾患に対して,抗血小板薬,スタチンを含む十分な薬物投与を行った後インターベンションを行った場合は,有害事象が生じる分だけ,心不全患者の予後は悪化する可能性もある。実際,STICH 試験(Velazquez EJ, et al. N Engl J Med. 2011; 364: 1607-16.)では,CABG+薬剤vs. 薬剤の効果が検討され,心血管死ではCABG の有効性が示されたが,全死亡ではCABG の合併症もあり,CABG の明らかな有効性は示されなかった。
疫学的にも安定した冠動脈疾患が心不全に合併していた場合,フォロー中に心筋梗塞を生じる可能性は低いと考えられている。また,患者背景因子まで補正した場合,冠動脈疾患合併の有無は全死亡に影響を与えないとの報告もある(EVEREST サブ解析; Mentz RJ, et al. Eur J Heart Fail. 2013; 15: 61-8.)。
ESC の急性・慢性心不全ガイドライン2012 では,狭心症状および残存した心筋のない場合,血行再建術の意義は不明と記載されている。われわれは,心不全に合併する安定した冠動脈疾患に対して治療をすべきだろうか。
企画:佐藤幸人
Opinion:下浜孝郎,阿古潤哉
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