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2013年秋にACC/AHAガイドラインが発表され,大きな議論をよんでいる。その一つが,LDL-C の治療目標の決定のしかたである。LDL-C を低下させることが心血管病予防に有効であることは,多くのエビデンスによって示され,メタ解析でも磐石のエビデンスを築いているといってよいであろう。治療目標については,“the lower, the better”という定性的な議論があり,リスクに応じて治療目標を定めてきたのがこれまでの欧米のガイドラインであり,日本でも同様の基本理念のもとにガイドラインが作成されている。たとえば二次予防であれば,100mg/dL未満という絶対値としての目標値を設定してきた。わが国のガイドラインでも,同様の絶対値を提示している。しかし,このような絶対値とともに,これまでのエビデンスをもとに,20~30%の低下率を求めるという文言も含んでいる。
2013 年のACC/AHA ガイドラインでは,このような絶対値によるエビデンスは存在しないと言い切ったうえで,絶対値による目標を明記しないという大きな方針転換がなされた。はたして,絶対値による治療目標を支持するエビデンスは,本当に皆無なのだろうか? また,低下率自体を治療目標とする磐石なエビデンスはあるのだろうか?