女性の平均寿命の延伸とともに,健康寿命との差が大きくなっていることが問題となっている。欧米では高齢女性の健康上の問題に心血管イベントが関わっていることが重視され,とくに超高齢化の進むわが国おいては医療費の観点からも大きな問題となっている。これに対し,欧米では,心血管イベント抑制を目的に多くのホルモン補充療法(HRT)による大規模試験が行われてきた。しかし,1998 年に発表されたHERS 試験(Hulley S, et al. JAMA. 1998; 280: 605-13.)では,エストロゲン・プロゲスチン併用による冠動脈疾患二次予防効果は認められなかった。その後2002 年には,HRT が心血管イベントリスクを増加させる可能性,さらには発がん性の問題(Rossouw JE, et al. JAMA. 2002; 288: 321-33.)によりWHI 試験が早期終了となり,社会的問題にまで発展した。WHI 試験の結果はHRT の心血管イベント抑制に対する期待を大きく裏切ることとなり,ほぼ,否定的な結論となっている。しかし,最近,HRT の選択,治療開始時期の考慮などといった地道な研究が報告され,日本産婦人科学会もHRT の適切な実施を推奨している。
ではいったい,HRT はどのような患者に,どのような治療法を用いることが適切なのか,そして,それが,発がん性,死亡といった予後まで含めた形で推奨できるレベルなのか? LDL-C 低下療法などを行ってもなお存在する残余リスクに対し,HRT は有用といえるのだろうか?
企画:寺本民生
回答:佐久間一郎
VOICE:Nanette Wenger
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