糖尿病合併高血圧患者を対象としたACCORD BP試験(ACCORD Study Group. N Engl J Med. 2010; 362: 1575-85.),冠動脈疾患合併高血圧患者を対象としたINVEST試験(Messerli FH, et al. Ann Intern Med. 2006; 144: 884-93. Denardo SJ, et al. Am J Med. 2010; 123: 719-26.)などで,収縮期血圧120mmHg未満への降圧治療の有用性が証明されず,一部のサブ解析で過降圧に伴うJ型現象の存在が指摘されている。高齢者高血圧を対象とした到達血圧とイベント発症との関係に関する後付け解析では,収縮期血圧120mmHg未満(Ogihara T. Am J Hypertens. 2000; 13: 461-7. , Ogihara T, et al. Geriatr Gerontol Int. 2011; 11: 414-21.)や,虚血性心疾患合併時の拡張期血圧70mmHg未満の危険性を指摘する解析結果もある(Fagard RH, et al. Arch Intern Med. 2007; 167: 1884-91.)。一般の大規模臨床試験成績では,現在の高血圧治療ガイドライン2009に示される降圧目標を目指して治療する範囲において,過降圧の危険性を明示するデータはなく,到達目標を達成する厳格な降圧が薦められている。しかしながら,もし125mmHg未満への降圧が危険な患者群が存在するとすれば,130mmHg未満を目指す降圧治療では降圧目標の幅がきわめて小さくなる。たとえば125mmHg未満を目指すとする1g/日以上の蛋白尿を伴う腎障害患者では,降圧目標自体に矛盾が生じる。
ガイドラインに降圧目標下限域を記載すべきだろうか。すなわち,降圧目標の下限域設定を必要とする患者群は存在する可能性はあるのか,あるとすればその下限域はどの値で設定すべきだろうか。
企画:楽木宏実
回答:小原克彦
Voice:原田和昌,William C. Cushman
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