■治療学・座談会■
いま新たに注目されるアスピリンの役割
出席者(発言順)
(司会)後藤信哉 氏 東海大学医学部内科学系
梅村和夫 氏 浜松医科大学医学部薬理学
内山真一郎 氏 東京女子医科大学神経内科
太田慎一 氏 埼玉医科大学消化器・肝臓内科

安全性の確保―喘息

■変化してきた喘息とアスピリンの関係

後藤 アスピリン喘息については昔から指摘されておりました。アスピリンを使うと喘息が悪くなる, 場合によってはアスピリンを飲むことで窒息死することすらあるとされてきました。最近はアスピリンで喘息後に困るということはなくなってきたという印象ですが。

内山 私は,アスピリンを服用して喘息が悪化したという症例をわずかながら経験しています。 しかし,アスピリンを処方している患者さんの数からいうと,その割合は非常に少ないです。

 ただ一般的に,気管支喘息の既往がある方は,薬剤部からは,「アスピリンの投与は控えたほうがいいんじゃないでしょうか」というアドバイスがあります。 そこでほかの薬剤に切り替えるということも日常診療ではありますね。ですから,実際にアスピリンを投与した場合にどのぐらい問題が出るかということに関しては実態がわかりません。

後藤 おっしゃるとおりですね。NSAIDs で喘息が悪くなるというのはかなり前から知られていたものですから,医療サイドの対応が十分になっているわけですね。 今のような薬剤部からの指示があるとなると,病状悪化の実態は減少していくのかもしれませんね。

喘息治療も最近はずいぶんと変わりました。喘息なのにアスピリンを出してしまったという症例でも最近は問題が出なくなっています。 その大きな要因として,ステロイドを使用することとも関係していると思います。

梅村先生,薬理学的にはいずれも抗炎症薬とされるステロイドとアスピリンの作用はどの部分が共通で,どの部分が拮抗すると考えればよいでしょうか?

梅村 抗炎症作用という意味では,アスピリンは COX-1 で,ステロイドのほうは核内受容体を介した抗炎症作用となります。 抗炎症といいながらも,ステロイドはサイトカイン系で,アスピリンはプロスタグランジン系ですので, そういう意味では炎症に対する関わりは少し違いますが,結果としてどちらも抗炎症作用があるということですね。

後藤 基本的にはどちらも付加的な作用として抗炎症作用があると理解してよろしいのでしょうか。 おそらく副作用の出血性潰瘍に関しても,同じような考え方でよろしいでしょうか。

梅村 はい,そう考えていいと思います。

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