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インフォーミング・ジャッジメント
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III III. カイザー保険の全国統合糖尿病ケア:管理プログラム
   ブリティッシュコロンビア州におけるエビデンスにもとづく医薬品ポリシーの実行と評価
 (Kaiser Permanente's National Integrated Diabetes Care Management Program)

Matt Stiefel,Kendra Rothert,Robert Crane ,William Caplan,Helen Pettay
内田 英二   昭和大学医学部 第二薬理学
エグゼクティブ・サマリー(Executive Summary)
序 論(Introduction)
カイザー保険におけるクリニカルリサーチ,ポリシー,実施の統合
 (Integration of Clinical Research, Policy, and Implementation at Kaiser Permanente)
ケーススタディ:カイザー保険の糖尿病ケアマネジメントプログラム
 (Case Study: Kaiser Permanete's Integrated Diabetes Care Management Program)
エピローグ(Epilogue)
文 献
用語集(Glossary)
付 録(Appendices)

カイザー保険におけるクリニカルリサーチ,ポリシー,実施の統合
 (Integration of Clinical Research, Policy, and Implementation
at Kaiser Permanente)
 1990年後半に,カイザー保険のリーダーとポリシーメーカーはヘルスケア産業が共通して直面する問題に遭遇した。文献やわれわれの作業内容は,慢性疾患を抱えているメンバーのためにヘルスケアとその結果を改善する大きな転機が必要だと示しているが,問題はどのようにそれを実行するかである。どのようにこれらの知識とそれにより生まれるポリシー,またポリシーの実施の橋渡しをするかが重要である。
■□■  ケアマネジメント研究所  
  (The Care Management Institute)  ■□■
 これらの考察により,Kaiser Foundation Health PlanとFederation of Permanente Medical Groupは共同出資を行い,ケアマネジメント研究所(Care Management Institute: CMI)を1997年に設立した。CMIの目標と任務は下記のとおりである。

 目標: 国家レベルでのCare Management Instituteは最善のクリニカルアプローチについての知識を体系化し,効果的で効率の良いヘルスケアプログラムを作成,実行し,また評価する。
 任務: Care Management Institute はカイザー保険の全メンバーの健康状態を向上させるヘルスケアを提供するために,国家全体で統一性をもち,エビデンスにもとづき費用対効果のアプローチを実現する。
 簡潔に述べると,CMIの総合的なテーマは「適切な作業をより簡単にすること」である。
適切な作業 (The Right Thing)
 CMIの目的は,エビデンスにもとづき,費用対効果があり,国民全体のケアを最大限にできる「適切」な作業を定義するための補足的かつ統一された取り組みを主としている。その例として,エビデンスにもとづく医療の厳格さを採用し,ケアマネジメントプログラムを考案するためにカイザー保険の3つの主なリサーチセンターからの結果を使用すること,成功する可能性のある作業を決定し定着させること,またKaiser Permanente's Clinical Information System(CIS)に入力するための企業内容の決定とそのメンテナンスをサポートすることなどが含められる。
作業の簡潔化(Making It Easier)
 適切な作業をより簡単に行うことは,個人とグループへの取り組みやサポートまたケアをサポートするシステムを向上させることにより,実施を促進することを含んでいる。

 その例はImplementation Networkの作業,地域や国のリーダーとの共同作業,Fund for Implementation Assistanceの開発,医学知識のウェブサイト(Permanente Knowledge Connection: PKC)の作成と管理などを含んでいる。適切な作業を簡単にすることとは,CMIの作業がCISやわれわれのメンバーのウェブサイト(KPオンライン)を含む最新の技術と提携されることや,また国民全体のケアマネジメントをサポートするための技術が確立されることである。
中継としてのCMI (CMI as Nexus)
 図1に示されるように,CMIはエビデンスにもとづくケアマネジメントプログラムを開発,実行する際の研究とポリシーメーカーの中継をしている。

 下記に示されるステップは、CMIによる国家ケアマネジメントプログラムの開発と実施の一般的なプロセスの概要である。
図1 CMI serves as the nexus for coordination between research and policymakers 図1
1. リサーチ
カイザー保険での経験や文献によるエビデンスから,CMIスタッフは優先的グループのために最善のケアマネジメントプログラムを作るための理論を立てる。カイザー保険の3つの主なリサーチセンター(カリフォルニア北部のDepartment of Re-search,米国北西部とハワイにあるCenter for Health Research,カリフォルニア南部のResearch and Evaluation Center)は医学的なエビデンスの重要な情報源である。
2. ポリシー
カイザー保険の医療グループとヘルスプランリーダーから構成されるCMI理事会(Board of Direc-tors)は,資料にもとづいて国家のケアマネジメントプログラムを作成するために,優先メンバーのグループを構築する。
3. リサーチ
CMIスタッフはカイザー保険での経験と文献をもとに,医学や運営に関する専門家,カイザー保険の優秀なスタッフで構成されるチームとともに,ケアマネジメントプログラムの開発を企画する。エビデンスは,医学的マネジメントと成功率の高い実践の場における2つの分野で審議される。生物数学を利用したCMIの模擬モデル“アルキメデス(Archimedes)”により,異なる方法による医学的ポリシーの効果や,実施に向けたガイドラインの査定,またプロセスの改善がもたらす長期的な医学的また経済的効果を推定することが可能となった。
4. ポリシー
CMI委員会がケアマネジメントプログラムを検討し承認する。
5. 実 施
CMIは実施に対する資金援助について各地域と契約を結び,目的とする技術の医学的効果と効率の向上のために,分析に関するネットワークの支援機関と契約を結ぶ。
6. 測 定
CMIスタッフは,カイザー保険の医学,測定に関する専門家のチームとともに測定システムの開発を企画する。測定システムの要素は,詳細の記述,全住民を基本とするケアマネジメントのための医療登録,また基準値とプログラムの評価に関する国全体の成果の研究を含んでいる。各地域のスタッフで構成されるCMI Analytic Networkは医学的な批評やケアマネジメントのための記録や担当を設置し,国全体の成果についてのデータを提供する。CMIスタッフは,時間と地域の違いによる作業の比較と,効果的な作業の評価基準,また実施がもたらす効果など,国全体における成果の報告書を毎年作成する。
7. 実 施
各地域の医師やプロジェクトマネージャーから構成されるCMI Implementation Networkはケアマネジメントプログラムの地域の実施を支援する。
8. 実 施
CMIは,実施に向けての問題と最新医学の発展について論議するために,年4回の国民利用者グループ会議を開催する
9. 測 定
CMI Analytic Networkは,対象とする作業の地域の進展状況に関する報告書を年4回企画する。
10. 研究とポリシー
CMIスタッフは,ステップ3で記述されているCMI 委員会による審議と承認のために,ケアマネジメントプログラムのレビューと最新版を最低2年に1回は企画する。
■□■  ケアマネジメントプログラムの実践  
  (Practical Implementation of Care Management Programs)  ■□■
 この報告書の残りでは,KP Integrated Diabetes Care(IDC)Management Programをケーススタディとして用い,上記に示された概念的なアプローチの実践および結果と習得された内容を述べる。

 要約すると,IDCプログラムの開始4年後には,われわれは糖尿病をわずらう33万人のメンバーのためのケアマネジメントにおいて著しい改善を達成した。その例は下記のとおりである。
1996年から1999年にHemoglobin A1c(HbA1c)のスクリーニングは71%から80%に上昇し,また適切な血糖コントロール(HbA1c<8%)の値をもつ糖尿病の患者のパーセンテージも33%から48%に上昇した。これは1996年に比べると,1999年にはスクリーニングを行ったメンバーが31,000人増加し,適切な血糖コントロールを行ったメンバーが51,000人増加したことになる。10年間にわたるこの改善により,1,000件の網膜疾患の予防,1,200件の微小血管(microvascular)にかかわる疾患の減少,5,000件の心血管(cardiovascular)の疾患の減少がもたらされた。
脂質検査とコントロールは,1996年の39%から1999年には51%(検査)に上昇し,1998年の25%から1999年には29%(適切なコントロール)に増加した。これは,適切な脂質コントロールを行ったメンバーが12,500人増加したことになる。
推奨された眼科検査を行った総合の割合は,1999年には75%であった。これはHealth Plan Employer Data and Information Set(HEDIS)90回目の57%の規準を上回り,Healthy People 2000の目標の70%を超えた。
腎臓の検査と治療に関しては著しい改善があり,1997年の59%から1999年には72%に上昇した。これは1999年には47,000人多いメンバーが,腎臓疾患のために適切な検査と予防的な治療を受けたことになる。
加えて,カイザー保険のサイズ,資金調達,運営に関するシステムは独自であるものの,われわれは,他の組織のケアマネジメントプログラム開発に模範となる方法を示しながら多くの事柄を学んできた。成功の要因は,共同作業によるポリシーの開発と展開,実施への焦点,測定など下記に記述されるおのおのである。
■□■  共同作業によるポリシーの開発と展開  
  (Collaborative Development and Deployment of the Policy)  ■□■
 カイザー保険の組織構造は,下記に示される研究とポリシーメーカーの共同作業に関する重要な要因を含め,独自でありまた複雑でもある。
各ケアマネジメントプランのために医学指導としてカイザー保険の優秀なエキスパートを任命すること。
開発作業グループのために地域のリーダーにより決定された医師や運営マネージャーを招集すること。
われわれのプログラムの開発においてはエビデンスに忠実であること。
実施と評価のために経済的な援助を提供すること。
カイザー保険全体で支持者とプログラムの利用者のネットワークを維持すること。
 この開発と展開に関する共同作業は,より強力で融通性のあるプログラムの開発をもたらすことになる。目標は,カイザー保険の医師らの医療行為を指示することではなく,サポートすることである。
■□■  実施への焦点:適切な作業をより簡単に行うこと  
  (Focus on Implementation: Making the Right Thing Easier to Do)  ■□■
 われわれは,医学的な内容とポリシー(適正な処理)は効果的な実行がなければ無価値なものであり,また効果的な実施はポリシーの作成よりはるかに困難であるということを学んだ。書庫に並ぶ医学に関するポリシーやプログラムのファイルは,短期間のうちに過去のものになってしまう。われわれのケアマネジメントプログラムは実行とそのサポートに焦点を当てている。医師の考えに耳を傾け,必要性に応じてプログラムを企画することは実施の成功に向けて重要なことである。たとえば,カリフォルニア南部のカイザー保険の医師は脂質試験の前に絶食を要求することは障害になると感じたため,絶食を課さない試験が実施された。われわれは,医師らは,たとえ些細な内容でも短い診療時間に付け加える業務に対し非意欲的であるということがわかったが,彼らは,彼ら自身の意見が取り入れられ,必要性や限界が考慮されていると感じた時にはより協力的になるということがわかった。

 自動化された指示,確認,文書化,ケアに関する批評においての情報技術は適切な作業をより簡単に行うための重要な要因であるが,このようなシステムを設立することは困難であり,時間や費用を要する。また登録情報が不正確であれば,システムはただちに信用を失い,廃止されることになる。
■□■  測定:“自身で測定したものは自身で管理せよ”  
  (Measurement: “You Manage What You Measure”)  ■□■
 測定システムはケアマネジメントプログラムの成功のためには必要不可欠である。医療登録や分類により,医師,ケアマネージャーおよびメンバーは成功率の高い医療や共通の問題を明らかにし,地域格差と時間経過を比較できるようになる。カイザー保険ケアマネジメントプログラムの将来の継続的な開発のために重要な分野は下記のものである。
医療情報技術
自動化されたオーダー登録,確認,フィードバック,また最新の検索方法や方針決定のサポートを使用した医学情報,自己管理を促進するウェブサイトなどを通じて,適正な作業を簡単に行うための要となる。
患者中心の結果に関するデータ
われわれの管理データシステムは測定処理のみに限られている。われわれは,活動状況とメンバーから直接引き出された結果を集めるために広範囲な測定機構を形成し,われわれのケアマネジメントプログラムの価値と有効性を測るよりよい測定方法を提供する必要がある。
プログラムの評価
われわれのデータ報告システムは現在,地域や時間経過におけるケアマネジメントプログラムの記述的な情報に焦点を当てている。この記述的情報が貴重である一方,介入と結果の関係や,地域格差,代替アプローチの費用対効果の理解を深めるために,研究とプログラム評価に関する調査を行う必要がある。われわれのシミュレーションモデル「アルキメデス」は,代替となるポリシーやガイドラインの試験,長期間にわたる健康管理やプロセスの改善に伴う経済効果を計画することに活用されることで,研究,ポリシー,実行の橋渡しをすることができるだろう。
病院の利用
文献による推測とは反対に,プロセスの大きな改善を行ったものの,カイザー保険全体ではわれわれのプログラムの結果としての,糖尿病患者の病院利用の減少は達成されていない。グルコース,脂質コントロールの改善と病院利用の改善との間には時間的差異があることは予測されていたが,われわれのプログラムの成功基準は,結果として病院利用の改善を証明することであろう。最も長期にわたり糖尿病ケアマネジメントプログラムを行った地域で,病院の利用が減少したというエビデンスがある。たとえば,Puget Sound(カイザー保険の会員)のGroup Health Cooperative(GHC)は近年,グルコースコントロールによる病院利用の減少とコスト削減についての後ろ向きコホート研究を文書で発表した5)

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